読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「愛の吐息は夜風にとけて」エリザベス・ホイト

 エリザベス・ホイトのメイデン通りシリーズ4作目です。この巻は、1巻から出てきている〈セントジャイルズの亡霊〉と呼ばれる謎に包まれた義賊にような存在の正体がついに詳しく明かされる、読み応え充分な一冊でもあります。それと同時に経験豊かな未亡人と童貞!という組み合わせ、特に初エッチシーン(馬車の中!)に至るまでの描写に燃えているホイトの気持ちが伝わってくる(と私は勝手に思っている)一冊でもあるのですよ。

愛の吐息は夜風にとけて (ライムブックス)

愛の吐息は夜風にとけて (ライムブックス)

 

 あらすじ

街に夜ごと現れる、謎に包まれた〈セントジャイルズの亡霊〉。
ある晩、馬車を走らせていた貴婦人イザベルは、けがを負った〈亡霊〉を見つけて屋敷に連れ帰る。夜明けを待たずに姿を消した正体不明の男性に、なぜかイザベルは不思議な魅力を感じた――。
その数日後、貴婦人たちが支援する孤児院の経営者で、庶民男性の心優しいウィンターを社交界入りさせることになり、その指南役となったイザベル。
会話やダンスのレッスンを重ねるうちに、互いの孤独な心に気づき次第に惹かれあっていくが……。

 

もちろんホイトが力を入れているのは、官能シーンばかりではありません。お相手のイザベルは不妊で子供を産むことができないという設定で、それに関してはロマンス小説らしく最後に奇跡が起きて、ということも起こらないのです。しかしそこはホイトらしいハッピーエンド、読者が満足のいく大団円で占めてくれますね。しかもこのシリーズでは、当時の問題でもあった問題(2巻の「無垢な花に約束して」ではジンの密造、今回は児童労働問題)を取り上げており、ホイトの官能描写だけではない、社会意識の高さも読み取ることができます(でもエロも充実しているのは確か。真面目な性格の愛に生きる童貞は、あんなことやこんなことに対しても非常に探求熱心)。

『人生は努力したからといって上手くいくわけではないが、よき伴侶(精神的にも肉体的にも)を得ることで、より素晴らしい日々を送ることもできる』彼女の小説を読むたびに、私はこういう感想を抱きます。しかしこれを一言にギュっとまとめてしまうと、性的相性は超重要!!とも言えるので、なんかホイトを読むたび人生体力勝負なのでは?という疑問が、私の心に浮かんでしまうのも事実なのですが...。

 

「浜辺に舞い降りた貴婦人と」メアリ・バログ

 これはメアリ・バログの新シリーズ、サバイバーズ・クラブの第1作目です。メアリ・バログは大人の男女の非常に細やかで深みのある心情を描くことができる、優れた作家だと言えるでしょう。しかし彼女の作品をロマンス小説と言い切ってしまうにはあまりに複雑で成熟した話を書くため、物語に楽しさを求めるタイプの読者には受け付けられない場合が想像できるのです。なぜならメアリ・バログという作家は、物語の中に貴族や平民という階級による生活の違いをしっかりと組み込んで、それぞれが生きる世界の違いをごまかさずに描写する作家なのです。もちろんそのことは物語により一層の深みを与えているのですが、同時に愛だけでは越えられない一線というものを読者がはっきり意識せざるを得なくなることも事実でしょうね。

浜辺に舞い降りた貴婦人と (ライムブックス)

浜辺に舞い降りた貴婦人と (ライムブックス)

 

 あらすじ

初春のある日、トレンサム卿ヒューゴ・イームズコーンウォールの海岸近くにあるスタンブルック公爵の屋敷での時間を楽しんでいた。
朝食後に海岸へ散歩に出かけたヒューゴは、岩場で転倒して動けずにいた美しい貴婦人グウェンドレンを助ける。彼女は友人宅に滞在していたのだが、怪我が治るまで動かしてはならないという医者の指示により、運び込まれたスタンブルック邸に留まることになった。
軍隊では貴族と平民とのあいだに時として諍いがあったため、新興富裕層だが平民であるヒューゴは、貴族の女性など鼻持ちならないと思い込んでいた。それゆえ、はじめは反発しあっていた二人だったが、共に時間を過ごすうち、どうしようもなく惹かれ合ってゆき……。

 

 

私はメアリ・バログの話に出てくるカップルを、ヒーローもしくはヒロインと呼ぶことに、どうにもためらいを感じてしまいます。彼らのことは、物語の中を生きている色々な人々とでも言えばよいのでしょうか?それぞれの人生を精一杯生きているからこそ当たり前のように悩みや苦しみを持ち、ふと出合った人に思いがけなく強く惹かれ合う。そういったお互いがお互いを求めてやまない姿は、この世界のどこかにいる誰かの人生のひとコマを垣間見ているような気がしてしまうほどです。

「ああ、ヒューゴ、二人だけの小さな世界を見つけるために、どれだけ多くの異なる世界を超えていかなくてはならないとしても、わたしはかまわない。平気よ。すべきことをしていくつもりよ。」

どんなに深く惹かれあってもそれだけではどうしようもない生き方のズレや違いをあいまいにしないのが、バログの書く話の特徴といえるでしょう。これは決して他の作家の作品が浅いと言いたいわけではなく、私がバログの話を読む時にはいつも、美しい蓮の花の下にある泥の存在が透けて見えるような気がしてならないのです。

「雨上がりの恋人」エリザベス・ホイト

 エリザベス・ホイトのプリンス三部作の1作目「あなたという仮面の下は」に続く、第2作目です。一言で表現するならば、とってもロマンチックな話と言えばよいのかもしれない。伯爵の長女ジョージナと土地差配人ハリーの、身分違いの恋の話です。なんか私はこの話、かなり好きかもしれない。なんでだろうか?

雨上がりの恋人(ライムブックス)

雨上がりの恋人(ライムブックス)

 

 あらすじ

8世紀の英国。伯爵の長女ジョージナの前に現れたのは、謎めいた土地差配人ハリー。彼女が相続した領地からの知らせを届けにきたのだ。ジョージナは彼と共に急遽ヨークシャーに向かうが、途上で雨に見舞われて馬車が横転。ハリーが身を挺して守ってくれたため怪我こそなかったものの、迎えを待つ間ふたりきりで夜明かしするはめに。しかし、こんな状況でも冷静で、常に紳士的なハリーに彼女は心を動かされる。やっとのことで領地にたどり着いたジョージナを待っていたのは、思いも寄らぬ事件だった。しかも、ハリーがその犯人であると疑いをかけられているという。真実を探ろうとするうちに、ジョージナは彼の秘密を知り…。

 

話の筋は上記の通り。ジョージナはいわゆるわかりやすい美人ではないが聡明で個性的な魅力を持つタイプ、ハリーは無口で実用性を重んじるタイプ(つまり仕事が有能ってこと)。どうやら私は、身分の高い知的な女性とおしゃべりではないけれど頼れる男性という組み合わせに萌えるみたい。しかもジョージナは、エッチに積極的(エリザベス・ホイトヒロインですから)で、自分から仕掛けていく女性でもあります。

 このハリーは、「あなたという仮面の下は」に出てくる伯爵エドワードの農業友達なので、最後の方にはエドワードも登場しています。文中の家畜殺しのミステリー及び殺人事件に関しても、程よいという書き方は可笑しいのかもしれませんが、悲劇を含みつつ明快すぎない解決を見るという意味でも私好みの話だと思う。

しかし何と言ってもジョージナの心根の健やかさみたいなものが、このカップルをきちんと支えていくだろうと思わせてくれることに読み応えを感じたことは確かですね。エリザベス・ホイトといえばもちろん毎回濃厚な官能シーンが期待できるのですが、ロマンス小説にとっては官能シーンだけではなく、文字通りロマンチックが不可欠なのです。やはり読者としては、2人がロマンス(+エロ相性)によってしっかり結ばれたと信じさせて欲しいんですよ。以前感想を書いた「ガラスの家」のカップルみたいに、ヒーローのどこがいいのか私にはさっぱり理解できずに、ヒロインの忍耐力が切れたら突然別れるんじゃないと疑いが残るモヤモヤハッピーエンドではないことが、特に今回はホイトの一番良いところだと思いましたね。

「淑やかに燃える口づけを」エリザベス・ホイト

 エリザベス・ホイトのメイデン・シリーズ通り第3弾です。「聖女は罪深き夜に」でヒロインだったテンペランスの妹であるサイレンスが盗賊王ミッキー・オコーナーとの恋に落ちる話ですが、これに関しては第1弾から伏線が張られていたので、まぁ順当なところと言えるでしょうね。

ホイトは「清らかな女性の魂に救われる悪党」という図式を書くのがお好みらしく、以前感想を書いた「心なき王が愛を知るとき」でもやはり、悪党が愛する女性の影響を受けて生き方を変えるという話を書いています。

淑やかに燃える口づけを (ライムブックス)

淑やかに燃える口づけを (ライムブックス)

 

 あらすじ

盗賊王ミッキー・オコーナーの娘の世話をするため、彼の屋敷に滞在することになった若く美しい未亡人サイレンス。非情な盗賊王と同じときを過ごすうちに、彼の意外な素顔を知って……。

 

正直前半はテンプレ通りかなぁと(悪党が純真な女性に惚れて、何とか理由をつけて自分のそばに置いておくうちに、彼女も悪党の内面に触れて彼に惹かれていく)。とは言いつつも、やはりホイトの物語に対する構成力や読者を引っ張り込む力に感心させられたことは事実です。

私はカップル2人だけで進んでいく場面よりも、悪党の住処で手下たちや下働きの娘とヒロインが親交を深めたり、ヒロインの兄弟たちの葛藤を姉がヒロインに教えてあげたりする場面の描写が秀逸だと思いましたね。ですから後半になって盗賊王ミッキー・オコーナーに改心をせまり、それを退けられて傷ついたサイレンスが姉であるテンペランスと夫婦間の精神的な結びつきについて語り合う場面などは、月並みな感想かもしれませんがしみじみと良いなと思わされました。

ロマンス小説らしく、当然最後はハッピーエンドで終わるのですが、けっこう終わりの方まで緊迫した場面が続くので、読者としては「えっ、これ上手く収まるの?」と疑問に思ってしまいます。しかしそこは流石の エリザベス・ホイト!無理なく綺麗に、しかも次への伏線つきで終わらせていますね。この辺りは、ホイトのプロとしての腕の見事さに感心させられました。

1巻の「聖女は罪深き夜に」から出てきている「セントジャイルの亡霊」の呼ばれる義賊のような謎の存在が、この3巻では良いアクセントになっています。この謎の人物がこれからこのメイデン通りシリーズにさらなる厚みを与えていくのですが、実は3巻の最後であっさりと正体が明かされるのです(でもこの正体に関しては後で色々と事情があかされる)。

本格的なミステリーというにはちょっと軽いのかもしれませんが(特にこの巻は正統派のメロドラマだと思う)、メイデン通りシリーズを読むとホイトが官能シーンだけが売りではない、読ませる作家なことがよく分かるんじゃないかな。

 

 

 

 

「聖女は罪深き夜に」エリザベス・ホイト

 エイザベス・ホイトのメイデン通りシリーズ、第1弾です。以前10作目の「心なき王が愛を知るとき」の感想を先に書いた際に、ブログに感想を書くため1作目から読み返してみようと思って戻って読んでみたのです。ざっくりとした内容しか覚えていませんでしたが、10作目にちょろっと出てきたテンペランスとケール卿がカップルとして出来あがるまでの話でした。

思ったより内容を忘れていたのですが、そういえば エイザベス・ホイトはロマンチックとセクシー(+ミステリーが少々)がほどよく混ざり合う色合いの物語を書くのが抜群に上手い作風だということを、改めて認識させられましたね。

聖女は罪深き夜に (ライムブックス)

聖女は罪深き夜に (ライムブックス)

 

 あらすじ

貧民街セントジャイルズで、弟とともに孤児院を営むテンペランス。弱い子供に手を差し伸べずにはいられない彼女だが、資金離で立ち退きを余儀なくされていた。そんなある日、銀髪に黒マントという出で立ちのケール卿が孤児院を訪れた。冷酷と悪名高い紳士だ。孤児院の救済と引き換えに、この界隈の道案内を頼みたいという。だが彼の本当の目的は、ある殺人鬼を捜しだすこと。そうとは知らず危険な捜査に同行することになってしまったテンペランスだが、なぜか彼のそばにいると安心し、普段は語ることのない苦労を打ち明けてしまう。そんなとき、捜査を阻むように街では次々と殺人事件が起こり、二人にも魔の手が迫る。

 

ヒロイン・テンペランスは、禁欲的に振るまう未亡人。しかし内側に激しい情熱(エロを多大に含む)を秘めています。ホイトはこのタイプの女性を書くのが上手いというか、そうした女性を魅力的に描写することが好きなんじゃないかと思います。「あなたという仮面の下は」でも一見しとやかに振る舞いながらも、実はエロに対してアクティブな一面を持つ未亡人(未亡人設定好きかも!)と貴族の恋を書いているのですから。

お相手のケール卿はやたらに面倒くさい性格で、これも「あなたという仮面の下は」の癇癪持ちな伯爵エドワードと一緒です。そもそもメイデン・シリーズ自体がけっこう暗い話なので、作風に従ってケール卿は一貫して辛気臭いムードを漂わせていました。しかしその分テンペランスとお互いのトラウマを開放しあう官能シーンは激しさに満ちており、ホイトがかなりエロティックな描写に力を注いでいるといっても過言ではないでしょうね。(ケール卿は、目隠しプレイや緊縛プレイ好き!他人のプレイを覗くことにも抵抗がないタイプ)

エロ描写は確かに多いのですが、エロが突出しているというよりホイトは人間が生きていくには性の官能が不可欠で、フィジカル面で相性の良い相手が人生をも豊かに彩るという主張を持っているのでは?と感じました。

それにしても揺れる馬車の中であっても気にせずアクティブに楽しむ2人は、けっこう凄いと思う。

「光と闇のはざまで」クレスリー・コール

クレスリー・コールのローア・シリーズで、「菫色の空へ」と対になっています。

菫色の空へ」は弟のカデオン編ですが、「光と闇のはざまで」は兄のライドストロム編です。ローア・シリーズでは運命の女が存在しているという設定がされているのですが、厳格で禁欲的なにーちゃんのお相手の女魔導師ザビーネは、「鏡のなかの魔女」に出てきた強力な力を持ち、ツンデレな性格の魔女マリキータと「時の扉を開いて」で活躍した凶暴なヴァルキリー・ケイドリンと、「幻の花嫁」でエロチックな魅力を存分に振りまいた元バレリーナ・ネオミを足して3で割ったような、とんでもない性格をしているのです。しかしデーモンの王であるライドストロムは、全く意のままにならない、嘘ばかりつくザビーネの性格に夢中となってしまいます。(M気質というより、お互いにSとMを交互に楽しんでいる運命の相手ならぬ運命のライバル感がある...ような気がする)

光と闇のはざまで (ソフトバンク文庫)

光と闇のはざまで (ソフトバンク文庫)

 

 あらすじ

九百年前、ロスカリナ王国の君主ライドストロムは、悪の魔道師オモートによって国を奪われた。首を落としても死なないオモートは最強の戦士であり、究極の悪の存在。そのオモートを倒せるという剣を探す途中、ライドストロムはオモートの異父きょうだいで女魔道師のサビーネにさらわれてしまう。そしてあり得ないことに、彼の本能はサビーネこそ運命の女だと告げていた…。善のヒーローと悪のヒロインが織り成すノンストップ・ラブロマンス。2010年度RITA賞受賞作。

 

 悪の魔導師オモートに自分の王国を奪われてしまい、 王国を取り戻すために全てを賭けてきたライドストロムの運命の相手は、オモートの妹である女魔導師のサビーネ。いわばロミオとジュリエット状態なのですが、ローア・シリーズのロミオとジュリエットは不死身でなおかつ対等に騙しあいをするのです。もちろんザビーネはライドストロムに強烈なセクシー攻撃を仕掛けます(ニートラップですね)。しかもザビーネは、様々なエロ・テクニック持ちの処女設定!うーん、なんかここにきてクレスリー・コールの設定描写にやる気がみなぎっているような気がしてなりません。

しかしクレスリー・コールは官能シーン描写に力を注ぐだけの作家ではなく、戦闘シーンやカップルが互いに惹かれあっていく様子を書くことにも非常に意欲的です。でも何といっても一番面白いのが、彼女の物語に出てくるヒロインは全員戦闘能力が高く黙っていうことを聞くタイプなど皆無なことでしょう。これは、同じ女性としてもけっこう気分がいいですね。確かに全員人間ではない設定ですから強いのは当たり前。でもクレスリー・コールの書くヒロインの性格の基本形は、自分の望みに対して遠慮せずにありとあらゆる方法を使って掴み取るタイプです。そしてそんなヒロインを心から愛すヒーロー。これが、ロマンス小説を読む醍醐味だ!

今回も全知全能の預言者ニクスがちらりと出てきますが、私はいつでもどこでも誰の話も全く聞かない超マイペースなニクスが、もしかしたら一番好きなのかもしれません。

「あなたという仮面の下は」エリザベス・ホイト

 引き続きエリザベス・ホイトで、しかもこの話は私のお気に入りの物語でもあります。しかし超オススメと言うには、全体的にちょっと地味というか....。とりあえず美男美女が出てくるきらきらストーリーではありません。というよりヒーロー・(ではないような気がする)伯爵エドワードは、博識&体格も堂々としている男性とはいえ、癇癪もちの毒舌家、しかも特にハンサムではない設定となっています。お相手のヒロイン・(でもないような気がする)アンナも30代の小柄で平凡な未亡人、やはり美人設定ではありません(でも口もとがセクシー)。平たく言えば、ホイトが30代の男女が次第に惹かれあう話をしっとりと描いた、というのが正解なのかもしれませんね。

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

 

 あらすじ

18世紀の英国。通りを疾走してきた馬とぶつかりそうになったアンナ。傲慢な雰囲気で謝りもせず立ち去った馬の乗り手の男性のことが、なぜか心に残った。家族とつつましく暮らしているアンナだが、倹約もそろそろ限界。生活のために伯爵エドワードの秘書の職を得るが、実は伯爵こそはあの馬上の男性。そしてアンナが女性であることは隠されていた。秘書を次々クビにする伯爵に手を焼いた家令が、困りはてた末に彼女を採用したのだ。新しい秘書が女性で、しかも数日前の事故の相手と知り、初めは憮然としたエドワードだったが、やがて彼女の凛とした生き方に惹かれてゆく。2人の絆は深まるが、身分の差を前にして、想いを打ち消さなくてはと互いに苦悶するばかり。そこでアンナが思い立った、ある手立ては…。

 

おそらくテーマとしては、愛によって身分の差を乗り越える男女であり、これはロマンス小説を読んでいると、たいへん多く遭遇するテーマでもあります。リサ・クレイパスならここぞとばかり、怒涛の勢いでロマンチック旋風を巻き起こし、何年かかろうとも真実の愛によって身分の差を乗り越える男女を描きますが(「ひそやかな初夏の夜の」が2年、「もう一度あなたを」はなんと12年!)、どうやらホイトはこの身分差乗り越え問題に関しては、肉体的な相性とあっと驚く行動力で乗り越えるのが好きなようですね。

あらすじに書いてあるアンナが思い立った、ある手立て関してですが、まんまネタバレになってしまうのでここでは書かないことにします。しかし、なかなかに身体を張ったセクシー戦法であることだけは確かと言えるでしょうね。実際はリサ・クレイパスの方が現実に即しているのですが、ホイトの本に出てくる登場人物たちのエロに対するアクティブで前向きな姿勢を含んだびっくりするような行動力には、毎回感銘を受けてしまいます。(なぜか三浦しをんの「格闘するものに○(まる)」というタイトルを思い出して仕方がない)。

この本はホイトのデビュー作だそうですが、初めからまばゆさには程遠い、セクシー展開の大人が鑑賞に耐えうる話を書いていたんだなぁと、感心してしまいました。