読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「ひそやかな初夏の夜の」リサ・クレイパス

リサ・クレイパスの「壁の花」シリーズ第一弾。もしかしたらこのシリーズの中では、この第一冊目が、時代背景を含めて一番良くかけているのかもしれないと思います。

「恋愛」という一種の虚構が結婚生活という現実に上手く着地するまでの話。結局アナベルが美人だったから上手くいったんでしょ、と安易に感じさせないリサの人物造形の複雑さには、読むたびにじんとしてしまいますね。アナベルが自分の世界(貴族階級)から愛する男性の属する平民階級へとたったひとりで移行することの真の意味が、現代人である私にはおそらく理解できないでしょう。だからこそこの本は私にとって正しく「恋愛小説」と言えるのもかもしれません。

 

ひそやかな初夏の夜の (ライムブックス)

ひそやかな初夏の夜の (ライムブックス)

 

 

あらすじ

19世紀半ばの英国。アナベルは22歳。貴族の娘とはいえ、家はひどく窮乏していた。社交界にデビューはしていたものの、誰からも求愛されない。アナベルは、上流社会で生きてゆくため、なんとかして貴族の青年と結婚したいと思っていた。愛のない結婚でもかまわない、と。2年後の初夏。アナベルは、社交パーティーの「壁の花」3人と知り合う。

 

 

 

お相手の実業家ハントは、貴族ではないけれど実力で成功してのし上がる魅力的な男性。こういう人物はリサの小説に非常に良く出てきます。彼女はこのタイプが好きなんだろうなぁとしみじみ。私個人の好みとしては、初期の作品である「同居生活」の実業家ザッカリーか、「黄昏にほほよよせて」のホテルオーナー、ハリー・ラトレッジの方が好みかな。

それから途中ちょいちょいシリーズ第2弾のヒロイン・リリアンとそのお相手ウェストクリフ伯爵(「恋の香りは秋風にのって」)との恋愛フラグがたちまくっているのが笑えます。