読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「もつれた蜘蛛の巣」モンゴメリ

 なんか「赤毛のアン」のバージョン違い?とでもいうのでしょうか?アンが可愛らしいきらきらとしたスワロフスキーで作られたビーズ細工のブローチみたいな話だとしたならば、この「もつれた蜘蛛の巣」は、先祖代々受け継いだ由緒ある骨董品のような話だと思いました(多分、上手く例えられていない)。ロマンチックな可愛らしさのある「青い城」とは随分、雰囲気が違うようにも感じたのだけれど...?

もつれた蜘蛛の巣 (角川文庫)

もつれた蜘蛛の巣 (角川文庫)

 

 あらすじ

ダーク家とペンハロウ家に伝わる由緒ある水差し。みんな喉から手が出るほど欲しがるこの家宝を相続するのは一体誰?老ベッキーおばがいまわの際に遺した突拍子もない遺言のせいで一族の面々は、かつてない大騒動を繰り広げることに。一族きっての美女ゲイの愛の行方は?長年秘密にされていたジョスリンの別居の真相は?やがて水差しの魔力は一同をとんでもない事件へと導くが…。モンゴメリ円熟期の傑作ロマンス。

 

 

小さな村で起こる様々な騒動や揉め事、いくつものロマンスに対して、作者はどちらかと言えばフラットな観察眼で描写しているように思いました。

実は私の実家の本棚には母の趣味で、「赤毛のアン」の全集が揃っていたのです。本の中では少女だったアンが成長して学校の先生となり、校長先生(!)にまで出世し、結婚して確か子供は6人だったかな?その後彼女の息子たちが、第一次世界大戦に出征するところまでが書かれています。読んだことのある方なら分かると思いますが、作者の視点はユーモアと温かみに満ちており、あくまで柔らかさが湛えられているのです。そんなアンの生涯を繰り返し読んでいた身として、この本はその柔らかなユーモア・センスが、いくぶん失われているような気がしてなりませんでした。

調べてみたら、どうやらモンゴメリの結婚生活は、決して幸せなものではなかったようです。*1もしかしたらそういった日常生活が、彼女の持っていた快活さのある作風に影響してしまったのかもしれません。あくまで私の勝手な想像でしかないのですが,,,。

*1:夫がうつ病を患っており経済的にも不安定で、モンゴメリ本人も不眠症に苦しんでいたことが後年刊行された日記に記されている。彼女の死因は、睡眠薬の飲みすぎによる自殺!