読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「あなたという仮面の下は」エリザベス・ホイト

 引き続きエリザベス・ホイトで、しかもこの話は私のお気に入りの物語でもあります。しかし超オススメと言うには、全体的にちょっと地味というか....。とりあえず美男美女が出てくるきらきらストーリーではありません。というよりヒーロー・(ではないような気がする)伯爵エドワードは、博識&体格も堂々としている男性とはいえ、癇癪もちの毒舌家、しかも特にハンサムではない設定となっています。お相手のヒロイン・(でもないような気がする)アンナも30代の小柄で平凡な未亡人、やはり美人設定ではありません(でも口もとがセクシー)。平たく言えば、ホイトが30代の男女が次第に惹かれあう話をしっとりと描いた、というのが正解なのかもしれませんね。

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

 

 あらすじ

18世紀の英国。通りを疾走してきた馬とぶつかりそうになったアンナ。傲慢な雰囲気で謝りもせず立ち去った馬の乗り手の男性のことが、なぜか心に残った。家族とつつましく暮らしているアンナだが、倹約もそろそろ限界。生活のために伯爵エドワードの秘書の職を得るが、実は伯爵こそはあの馬上の男性。そしてアンナが女性であることは隠されていた。秘書を次々クビにする伯爵に手を焼いた家令が、困りはてた末に彼女を採用したのだ。新しい秘書が女性で、しかも数日前の事故の相手と知り、初めは憮然としたエドワードだったが、やがて彼女の凛とした生き方に惹かれてゆく。2人の絆は深まるが、身分の差を前にして、想いを打ち消さなくてはと互いに苦悶するばかり。そこでアンナが思い立った、ある手立ては…。

 

おそらくテーマとしては、愛によって身分の差を乗り越える男女であり、これはロマンス小説を読んでいると、たいへん多く遭遇するテーマでもあります。リサ・クレイパスならここぞとばかり、怒涛の勢いでロマンチック旋風を巻き起こし、何年かかろうとも真実の愛によって身分の差を乗り越える男女を描きますが(「ひそやかな初夏の夜の」が2年、「もう一度あなたを」はなんと12年!)、どうやらホイトはこの身分差乗り越え問題に関しては、肉体的な相性とあっと驚く行動力で乗り越えるのが好きなようですね。

あらすじに書いてあるアンナが思い立った、ある手立て関してですが、まんまネタバレになってしまうのでここでは書かないことにします。しかし、なかなかに身体を張ったセクシー戦法であることだけは確かと言えるでしょうね。実際はリサ・クレイパスの方が現実に即しているのですが、ホイトの本に出てくる登場人物たちのエロに対するアクティブで前向きな姿勢を含んだびっくりするような行動力には、毎回感銘を受けてしまいます。(なぜか三浦しをんの「格闘するものに○(まる)」というタイトルを思い出して仕方がない)。

この本はホイトのデビュー作だそうですが、初めからまばゆさには程遠い、セクシー展開の大人が鑑賞に耐えうる話を書いていたんだなぁと、感心してしまいました。