読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「淑やかに燃える口づけを」エリザベス・ホイト

 エリザベス・ホイトのメイデン・シリーズ通り第3弾です。「聖女は罪深き夜に」でヒロインだったテンペランスの妹であるサイレンスが盗賊王ミッキー・オコーナーとの恋に落ちる話ですが、これに関しては第1弾から伏線が張られていたので、まぁ順当なところと言えるでしょうね。

ホイトは「清らかな女性の魂に救われる悪党」という図式を書くのがお好みらしく、以前感想を書いた「心なき王が愛を知るとき」でもやはり、悪党が愛する女性の影響を受けて生き方を変えるという話を書いています。

淑やかに燃える口づけを (ライムブックス)

淑やかに燃える口づけを (ライムブックス)

 

 あらすじ

盗賊王ミッキー・オコーナーの娘の世話をするため、彼の屋敷に滞在することになった若く美しい未亡人サイレンス。非情な盗賊王と同じときを過ごすうちに、彼の意外な素顔を知って……。

 

正直前半はテンプレ通りかなぁと(悪党が純真な女性に惚れて、何とか理由をつけて自分のそばに置いておくうちに、彼女も悪党の内面に触れて彼に惹かれていく)。とは言いつつも、やはりホイトの物語に対する構成力や読者を引っ張り込む力に感心させられたことは事実です。

私はカップル2人だけで進んでいく場面よりも、悪党の住処で手下たちや下働きの娘とヒロインが親交を深めたり、ヒロインの兄弟たちの葛藤を姉がヒロインに教えてあげたりする場面の描写が秀逸だと思いましたね。ですから後半になって盗賊王ミッキー・オコーナーに改心をせまり、それを退けられて傷ついたサイレンスが姉であるテンペランスと夫婦間の精神的な結びつきについて語り合う場面などは、月並みな感想かもしれませんがしみじみと良いなと思わされました。

ロマンス小説らしく、当然最後はハッピーエンドで終わるのですが、けっこう終わりの方まで緊迫した場面が続くので、読者としては「えっ、これ上手く収まるの?」と疑問に思ってしまいます。しかしそこは流石の エリザベス・ホイト!無理なく綺麗に、しかも次への伏線つきで終わらせていますね。この辺りは、ホイトのプロとしての腕の見事さに感心させられました。

1巻の「聖女は罪深き夜に」から出てきている「セントジャイルの亡霊」の呼ばれる義賊のような謎の存在が、この3巻では良いアクセントになっています。この謎の人物がこれからこのメイデン通りシリーズにさらなる厚みを与えていくのですが、実は3巻の最後であっさりと正体が明かされるのです(でもこの正体に関しては後で色々と事情があかされる)。

本格的なミステリーというにはちょっと軽いのかもしれませんが(特にこの巻は正統派のメロドラマだと思う)、メイデン通りシリーズを読むとホイトが官能シーンだけが売りではない、読ませる作家なことがよく分かるんじゃないかな。