読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「ふたたび恋が訪れて」カーラ・ケリー

地味ロマンチック(私の造語)の名手とも言えるカーラ・ケリーです。本来は地味とロマンチックの相性は良くないはずですが、カーラの手にかかれば世界でたった一つの堅実で大切な恋が生まれてしまいます。若き未亡人が出てくるのですが、エリザベス・ホイトの本に出て来るエロ満載の未亡人とは全く正反対の、真面目な、でも健康で可愛らしい主人公です。お相手のウィン卿は身分こそ高いのですが、優雅よりも質実剛健が似合う白髪まじりのオジサン。この2人が静かに情熱を燃やす大人の恋をして結ばれるまでが書かれています。また未亡人の娘2人が、本当に愛らしい!これは読んでいると心の内側が柔らかくほぐれてくるような、駆け引きなどない優しい恋の話ですね。

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

 

 あらすじ

19世紀英国。ロクサーナ・ドリューは半年前、夫アンソニーを病気で亡くし、悲しみに暮れる生活を送っていた。ところがある日、亡夫の兄マーシャルから、養ってやるかわりに自分の愛人になれと迫られてしまう。好色な義兄から逃れるため、ロクサーナは小さな家を借り、幼い娘ふたりを連れて移り住む。家の持ち主は侯爵のウィン卿であるが、戦争のため不在にしていた。ある晩、領地の視察をしていたウィン卿がこの家を訪れる。ウィンは悲惨な戦争体験や離婚のスキャンダルのため、人に心を閉ざしていた。だが、健気に生きるロクサーナや娘たちと友情を育むうち、ふたたび人を愛する気持ちを取り戻し…。ヨークシャーの大自然を舞台に、第二の人生を歩もうとするふたりが出会い、さまざまな障害を乗りこえて結ばれるさまを丹念に描いた、心温まる感涙のロマンス。

 

この時代の女性は、生きていくために、食べていくために結婚し、子供を産むのが当たり前でした。だからこそロマンス作家たちはアンチテーゼとして、「運命の恋」に落ちた恋人たちの話を何度でも飽くことなく書くのかもしれません。確かに華やかで煌びやかな舞踏会で出会って恋に落ちる話を読むことで、ロマンチックそのものにどっぷりひたることができるでしょう。しかしカーラの本に出てくる恋人たちは、ありふれた日々の生活を通じてゆっくりと相手の人柄を知っていくことが基本です。彼らはお互いを知って次第に心を通わせながら、相手の人間性に踏み込んだ関係を真面目にきちんと構築していきます。

放蕩貴族を更生させるには」では“赦しとは何か?”をテーマにしていましたし、「オックスフォードは恋の季節」では“女性の高等教育”を題材にしていました。いずれも生真面目に恋を育てるカップルたちばかりなので、読者はカーラの本に出てくる登場人物たちが物語の最後のページを閉じた後でも、幸せに暮らすだろうと確信できるのです。もしかしたらカーラは大人の女性に、「そしてみんなで幸せに暮らしました」という夢物語を信じさせてくれる力を持っている作家と言えるのかもしれません。