読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「あなたのそばで見る夢は」ロレイン・ヒース

これは一生に一度の恋貫いた2人の話でもあり、私がハーレクインというものに“はまる”きっかけとなった作品でもあります。貴族も舞踏会も豪華な宝石も何ひとつ出てきませんし、登場人物で重要なのは4人だけです。読者は主役カップルがひと月以上もの間、2人きりでテキサスの荒野を旅をするのを見守るかたちになります。

ハーレクインでは、よく「ん???」みたいなタイトルがつけられていますが、(「大富豪のナントカ」「侯爵がナントカ」)この「あなたのそばで見る夢は」というタイトルはこの作品にピッタリで、かつ作品のテーマを象徴していると言えるでしょう。

あなたのそばで見る夢は (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション ヒ 1-2)

あなたのそばで見る夢は (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション ヒ 1-2)

 

 あらすじ

19世紀後半のテキサス。手紙のやりとりだけで結婚を決めたまだ見ぬ婚約者に会うべく、ひとりジョージアからテキサスにやってきたアメリア。そんな彼女を駅で出迎えたのは、足を骨折した兄の代わりにやってきた、婚約者の弟ヒューストンだった。
婚約者の待つ家へと旅するアメリアはその道中、戦争で顔に大きな傷を負い、寡黙だが心優しいヒューストンに惹かれていき……。
心に深い傷を負った男女の愛を、RITA賞作家が丁寧に描く感動のヒストリカルロマンス !

 

私としては特に、ヒロイン・アメリアのしたたかな強さに惹かれました。一年間文通したとはいえ、会ったこともないない男性と結婚することを決意して遠いテキサスへやってくる女性。孤独を抱えるヒューストンはそんな彼女に一目ぼれしますが(可愛くてけなげだからね)、しかしアメリアは簡単にヒューストンを好きにはなりません。長い旅の間に少しずつ彼の細やかな感性を知って次第に愛するようになるのです。

でも2人の心が通じ合った後、へタレなヒューストンは2人の未来のために行動を起こすことができません。ハーレクインだけにハッピーエンドと知りつつも、腹の決まらないヒューストンに対して、アメリアは静かに別の男性との結婚を受け入れようとします。恋愛よりもこの先に続く人生を前を向いて生きることを優先するヒロインが物語の真ん中にいるからこそ、この話がありがちな甘ったるい恋物語に収まらない輝きを放てるのではないかと思いましたね。

タイトルのあなたのそばで見る夢とは、文字どおりお互いが寄り添い合いながら、2人で生きていくことを指しているのです。