読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「青い城」モンゴメリ

 ルーシー・モンゴメリと言えば「赤毛のアン」を書いた作家として有名です。というより「赤毛のアン」そのものが世界中に知られていると言えるでしょう。しかしモンゴメリは、“アンを書いた人”というだけではないのです。ではどういう人なのかというと“皮肉まじりの独特なウィットとユーモアセンスを備えた、優れた作家”という表現がしっくり来るような気がしますね。この「青い城」は、彼女のそういった作家としての資質をフルに発揮しているのではないのでしょうか。

青い城 (角川文庫)

青い城 (角川文庫)

 

 あらすじ

貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた…。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!?ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。

 

 

ヒロイン・ヴァランシーは、あらすじに書かれているとおりの「貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女」で、作中で何度も「美人ではない」と評されています。しかしモンゴメリは、その「美人ではない」ヴァランシーが、彼女しか持っていない魅力を勇気を持って開花させ、その魅力を充分に振りまきながらも人生を切り開いていく様子を、カナダの大自然の美しい描写とともに描いているのです。「赤毛のアン」はアンという少女の成長物語であってロマンス小説というわけではありませんが、この「青い城」はキラキラしたロマンスに満ちあふれたときめきを約束してくれる小説と言えるでしょう。

官能シーンは一切ナシ!でもページをめくる手が止まらない!その辺りはジョージェット・ヘイヤーを思わせますが、あちらがリージェンシーと呼ばれる時代*1の恋人たちを書いているのとは違って、「青い城」の時代背景はもう少し後の1900年代ごろとなっています。

それからこの物語の翻訳文がとても美しいのですが、あとがきによると翻訳者の谷口由美子さんは原作にほれ込んで、出版のあてもないまま1ページ1ページ、宝物のように訳したみたいですね。モンゴメリの他の本も読んでみたくなりました。

*1:摂政時代(英語でRegency eraまたは単にRegency)は、イギリスにおいてジョージ3世が統治不能に陥り、息子の王大使ジョージが摂政王大使として統治した時期を指す。1811年から1820年までのほかに、1795年からウィリアム4世が死去する1837年を指すこともある