読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「光と闇のはざまで」クレスリー・コール

クレスリー・コールのローア・シリーズで、「菫色の空へ」と対になっています。

菫色の空へ」は弟のカデオン編ですが、「光と闇のはざまで」は兄のライドストロム編です。ローア・シリーズでは運命の女が存在しているという設定がされているのですが、厳格で禁欲的なにーちゃんのお相手の女魔導師ザビーネは、「鏡のなかの魔女」に出てきた強力な力を持ち、ツンデレな性格の魔女マリキータと「時の扉を開いて」で活躍した凶暴なヴァルキリー・ケイドリンと、「幻の花嫁」でエロチックな魅力を存分に振りまいた元バレリーナ・ネオミを足して3で割ったような、とんでもない性格をしているのです。しかしデーモンの王であるライドストロムは、全く意のままにならない、嘘ばかりつくザビーネの性格に夢中となってしまいます。(M気質というより、お互いにSとMを交互に楽しんでいる運命の相手ならぬ運命のライバル感がある...ような気がする)

光と闇のはざまで (ソフトバンク文庫)

光と闇のはざまで (ソフトバンク文庫)

 

 あらすじ

九百年前、ロスカリナ王国の君主ライドストロムは、悪の魔道師オモートによって国を奪われた。首を落としても死なないオモートは最強の戦士であり、究極の悪の存在。そのオモートを倒せるという剣を探す途中、ライドストロムはオモートの異父きょうだいで女魔道師のサビーネにさらわれてしまう。そしてあり得ないことに、彼の本能はサビーネこそ運命の女だと告げていた…。善のヒーローと悪のヒロインが織り成すノンストップ・ラブロマンス。2010年度RITA賞受賞作。

 

 悪の魔導師オモートに自分の王国を奪われてしまい、 王国を取り戻すために全てを賭けてきたライドストロムの運命の相手は、オモートの妹である女魔導師のサビーネ。いわばロミオとジュリエット状態なのですが、ローア・シリーズのロミオとジュリエットは不死身でなおかつ対等に騙しあいをするのです。もちろんザビーネはライドストロムに強烈なセクシー攻撃を仕掛けます(ニートラップですね)。しかもザビーネは、様々なエロ・テクニック持ちの処女設定!うーん、なんかここにきてクレスリー・コールの設定描写にやる気がみなぎっているような気がしてなりません。

しかしクレスリー・コールは官能シーン描写に力を注ぐだけの作家ではなく、戦闘シーンやカップルが互いに惹かれあっていく様子を書くことにも非常に意欲的です。でも何といっても一番面白いのが、彼女の物語に出てくるヒロインは全員戦闘能力が高く黙っていうことを聞くタイプなど皆無なことでしょう。これは、同じ女性としてもけっこう気分がいいですね。確かに全員人間ではない設定ですから強いのは当たり前。でもクレスリー・コールの書くヒロインの性格の基本形は、自分の望みに対して遠慮せずにありとあらゆる方法を使って掴み取るタイプです。そしてそんなヒロインを心から愛すヒーロー。これが、ロマンス小説を読む醍醐味だ!

今回も全知全能の預言者ニクスがちらりと出てきますが、私はいつでもどこでも誰の話も全く聞かない超マイペースなニクスが、もしかしたら一番好きなのかもしれません。