読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「ひめごとは貴婦人の香り」エイザベス・ホイト

 エリザベス・ホイトの感想が多すぎ!なのですが、ホイトは私にとって質・量ともに満足できる作家なので、彼女の本を読み出すとホイト祭りになってしまいます。特にこの『四人の兵士の伝説』シリーズに関しては、ロマンチック度合いが私自身にぴたりとくるのですよ。

展開としては第1巻のこの本よりも、2巻目の「道化師と内気な花嫁」の方が個人的にはツボなのです。しかしこの話は、最初から最後に至るまで物語の流れの全てがものすごーーくロマンチック!辺境育ちの野生的な男性と貴婦人の組み合わせ、かつ男性は復讐という目的を心に秘めているというロマンス小説あるある設定なのですが、ホイトの腕にかかってうっとりするぐらいのメロドラマに早変わりしています。

ひめごとは貴婦人の香り (ライムブックス ホ 1-4)

ひめごとは貴婦人の香り (ライムブックス ホ 1-4)

 

 あらすじ

植民地ボストンで貿易商として成功しているサム。過去の事件の真相を探るためにロンドンにやってきた。伯爵令嬢で未亡人のレディ・エメリーンの隣家を借り、彼女に妹レベッカの付き添いを依頼する。社交界に入り込んで真犯人を見つけるためだ。だが次第に、たった一人で家族を支える強くも美しいエメリーンに惹かれていくが…

 

人はこうやって、なす術もなく恋に堕ちる(落ちるというより文字通り堕ちると書きたくなる)のだろうなぁと納得させられましたね。ホイトが好んで書く賢くて気の強い未亡人エメリーンと、ワイルド&セクシーに加えて強引という、ロマンス小説としては非の打ち所がないサムはエロティックなひと時を共有します。しかし二人の身分や生きる環境がかけ離れていることを理由に、エメリーンは二人の関係に未来を認めず貴族にありがちな情事として終わらせようとするのです。けれども一度は切れてしまった運命の糸は二人の恋愛を成就へと導き、ドラマティックなハッピーエンドを迎えます(この場合に運命の糸を操るのはホイトなので、当たり前なのですが)

フレンチ・インディアン戦争*1で、サムが所属していた部隊が遭遇した裏切り者を探すというミステリーをたて糸に、アメリカ人サムとイギリス人エメリーンのロマンスをよこ糸に、ホイトは自在にこのたてとよこの糸を操ります。そして読者の目の前で、あざやかな模様を織り上げ、隅々までよく見えるように広げてくれるのです。

またこってり濃厚な大人の恋愛と対比で、サイド・ストーリーとして書かれているサムの妹レベッカと従僕オヘアの、これからの未来を強く感じさせてくれる可愛らしい恋も良かったですね。例えていうなら、カラフルな包み紙に入っている甘くて美味しいキャンディを食べているみたいな気がしました。

何度かある官能シーンもいいのですが、エメリーンがサムから逃げようとしておっかけっこになるが捕まってしまい、屋敷の小部屋に引っ張り込まれるシーンなどはさすがホイトと言いたくなりましたね(こういうのを書かせると、ホイトは抜群だと思う)。

*1:18世紀に北アメリカで起こった、イギリスとフランスの植民地における領土拡大争い