読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「オックスフォードは恋の季節」カーラ・ケリー

 エリザベス・ホイトとほぼ真逆といっても良いくらいの作風、カーラ・ケリーです。ヒロインはいつか世界中を旅して、旅行記を書いてみたいという夢を持つエレン。セクシーでもなければエロティックな魅力を持っているというタイプでもありません。でもエレンは女性が勉強することなど許されていなった時代に、ひょんことからシェイクシピアに関する論文に取り組んで、見事に完成させます。

カーラ・ケリーの話に出てくる主人公は、可愛らしいけれど生真面目タイプが基本です。忘れてはいけないのが、他のロマンス小説にあるようなめくるめく官能シーンが期待できないことでしょう。しかしヒーローとヒロインがつたないながらも一歩一歩恋を進めていく様子を見つめることで、微笑ましい気持ちになること請け合いですよ。

オックスフォードは恋の季節 (扶桑社ロマンス)

オックスフォードは恋の季節 (扶桑社ロマンス)

 

 あらすじ

18歳のエレンは兄ゴードンのようにオックスフォードで勉強する夢があった。しかし女性は入学できない時代。なんとか叔母の助力で、オックスフォード大学近くにある女学校に入ることになった。街に着いた日、エレンは苦学生らしい親切な青年ジムに出会い、この後の生活に期待を抱く。だが、女学校は単なる花嫁学校でしかなく、失望した彼女は学校に馴染めずにいた。ある日、兄の頼みで大学の授業を受けることになり、エレンは嫌々ながら男装をする…。リージェンシー・ロマンスの女王が贈る青春物語。

 

この話は1810年ごろのイギリスで繰り広げられており、エレンは勉強嫌いの兄ゴードンの代わりにシェイクスピアの論文を書くことから、恋と物語が次々と転がっていくのです。当時の女性にしては生意気で(自分の意見を持っている)、変わり者(刺繍するより本が好き)なエレンが、公的に決して認めてもらえないと知りつつ論文をこっそりと熱意を持って書き進める様子は今の時代とかけ離れているようですが、見えない男女差別に苦しめられた経験がある現代女性と、どこかに通じる部分があるのではないでしょうか?

当時の女性の習いとして全てを諦め親の決めた男性と結婚しようとする彼女が、自分自身の殻を破って新しい世界に飛び込んでいくまでを暖かく見守る、そんな役割を読者は課せられています。

ちょっと風変わりな謎多き青年ジムとの、進展しているようでなかなか進展しない恋(初々しさがあまりに可愛らしくて、恋愛というより恋と呼びたくなる!)にヤキモキしながら、女性が満足に教育を受けられなかった時代に思いをはせてしまいました。

カーラ・ケリーなので、ノーエッチ、キスまでです。でもエレンが自分からジムにキスするシーンは、ついついにんまりしてしまいましたね。