読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「放蕩貴族を更生させるには」カーラ・ケリー

カーラ・ケリーの話には、ロマンス小説によくある華やかさや劇的なシーンがほぼ存在しません。しかし彼女たちの話には、ヒーローがヒロインに大きく影響されて自分の生き方を変えてしまうというけっこうな女性上位といえる特徴があるのも事実です。

侯爵ジョンはアル中のおっぱい星人、お相手のエマはジョンの大好きな大きいおっぱいも持っていますが同時に人としての強さとユーモアセンスを兼ね備えた女性です。二人が友達として信頼できる関係を築いていくことで、ジョンはエマの大きなおっぱいよりもその素晴らしい内面に気がつくようになります。二人とも相手を意識するがあまりに恋愛方面に進むまいとブレーキをかけまくるので、恋心を自覚したジョンの頑張り(エンジンかかるのが遅い!)と最後の人生賭けたエマへのラブアタックには、ほっとさせられましたね。

放蕩貴族を更生させるには (ラベンダーブックス)

放蕩貴族を更生させるには (ラベンダーブックス)

 

 あらすじ

19世紀英国。侯爵のジョンは戦争で父親を殺され、自らも片目を失って以来、生きる目的を失い自堕落な生活を送っていた。ある日、米国からいとこのロバートとサリーがやってくる。ふたりは、侍女としてエマという女性を連れていた。エマの凛とした態度に心惹かれるジョンだったが、彼女が父親の仇と同じアイルランド人と聞き、暴言を吐いてしまう。そんなエマにさらなる悲劇が襲いかかる。博打好きのロバートが賭け金の支払いに困り、エマの年季奉公契約書を見ず知らずの相手に渡そうとしたのだ。しかし、危ういところでジョンが支払いを肩代わりし、事なきを得る。ジョンに奉公する身となったエマは、彼を更正させたならば、自由人となるという契約をジョンと交わす。かくしてジョンの更生計画が始まった。

 

 

ジョンはイングランドアイルランドの戦争によって肉親を殺されかつ自らの片目も失っており、方やお相手のアイルランド人エマも戦争で酷い目に合っています。しかしそうした複雑な歴史的背景がありながらも二人の交わす会話の多くは軽妙でつい笑ってしまうことが多く、二人の心が次第に深いところで通い合っていくのが読者にも伝わってくるのです。

この話に描かれているのは、戦争によって深い傷を負った二人がゼロどころかマイナスから人間関係を築いていく話です。ロマンス小説愛好家である私にとって、シリアスとも言えるこの話は本来ならそこまで興味を抱かないはずなのですが、一度はぼろぼろになった自分の人生にどうしても必要な本当の伴侶を見つけるという人生を賭けたロマンスが描かれているという点において、やはり心がときめくものがあると断言できますね。

それからジョンがとにかくキュートめちゃくちゃ可愛げのある性格。彼のだらしさに文句いいつつも放っておけずに、ジョンを好きになってしまうしっかり者のエマの気持ちが分かりすぎる!最後ラブアタック&プロポーズを受けたエマが嬉しさのあまり泣き笑いをしてしまう場面も、キュンキュンしました。