読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「道化師と内気な花嫁」エリザベス・ホイト

 最近プライベートが落ち着かなかったので、すっかり更新が滞ってしまったけれど、なんとか頑張りたい今日この頃な私....。

こんな時にはエリザベス・ホイトのセクシーな描写に身を任せてみるのも一つの手かもしれない。

というわけでこの「道化師と内気な花嫁」は「ひめごとは貴婦人の香り」の続編にあたる話です。一言で内容を説明しようとするならば、『「内面が複雑な男性」と「内面が複雑な女性」がハッピーエンドにたどりつくまでの話』と言えばよいのでしょうか?または、『面倒くさい性格の男性を好きになってしまった女性の話』かな?

いずれにせよタイトルにあるヒーロー=道化師という表現に関しては上手いなぁと感心するのですが、内気?内気じゃないでしょこのヒロインは!と読者全員のツッコミが聞こえる物語の展開でした。ヒーローに向って「あなたは世界一愚かで、頭が空っぽで」「人類史上、まれにみる能無しよ」とか言い放つし。

それでも前作からの伏線をきっちり回収しながら、ヒーロー・ヒロインの(2人ともとにかくやたら面倒くさい)性格をたいへん魅力的に仕上げてくるホイトの作家としての腕は、見事としか言いようがありませんね。

道化師と内気な花嫁 (ライムブックス)

道化師と内気な花嫁 (ライムブックス)

 

 あらすじ

「代わりにわたしと結婚してください」結婚式当日にまたもや婚約破棄され、意気消沈していた子爵ジャスパーに、名家の令嬢メリサンドが結婚を申し出た。あまりに唐突で驚かれたが、内気な彼女自身も普段では考えられない発言をしてしまったことに驚いていた。しかし5年前のあるパーティで、陽気な子爵がじつは心にただならぬ傷を負って苦悩している姿を目撃して以来、ずっと彼に想いを寄せていたのだ。そんなことはつゆ知らず、彼女の大胆さに感服したジャスパーは申し出を受け入れた。『ひめごとは貴婦人の香り』続編登場!センシュアルなおとぎ話の世界へ―。

 

ヒーローである子爵ジャスパーは、いっけん流されるがままの性格に見えてしまうのですが(常にヘラヘラしている)、実は強固な意思を持って自分の複雑な内面というものを他人に見せようとしない人物です。メリサンドは、前作のヒロイン・エメリーンの友達です。気が強い割りにヒーロー・サムに振り回されまくったエメリーンとは反対に、冷静かつ情熱的なアプローチでジャスパーの心をまるごと手に入れたメリサンドには脱帽してしまいます。またホイトの筆具合の巧みさにうっとりしているうちに「よかった、よかった」と話がまとまるのですが、冷静に考えると私の中にジャスパーに対してのメンヘラ疑惑がふつふつと...。

だから私としては、最初からメリサンド主導で結婚し彼女の踏ん張りで幸せをつかんだジャスパーに対して、しみじみ「メリサンドに拾って貰ってよかったね」と思いました(まぁ2人してエロ方面に関して、とってもやる気を出していたことは認めます=性的にアクティブな2人)。それとヒーロー・ヒロインともに、ハンサムでも美人でもないと描写しているのが面白かったですね。

実のところこの話は戦時中の裏切り者を探すというシリーズ全体を貫く大きなテーマがあるにもかかわらず、ジャスパーとメリサンドがゆっくりと確実に関係を深めていく部分がの描写が秀逸すぎて、そちらの感想まで手が回らないことが残念。ホイトは面倒くさい事情を抱えた人物を、びっくりするほど魅力的に書くのが上手いからなぁ(エロ込みで)。