読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「マシューズ家の毒」ジョージェット・ヘイヤー

 「紳士と月夜の晒し台」に続くジョージェット・ヘイヤーのコージー・ミステリ*1、シリーズ第2弾です。個人的には前作よりも、こちらの方が好みかな。現代のミステリだとインパクト重視が多いので、サイコパスが出て来たりおどろおどろしい動機が隠されていたりしますよね。しかしそういったことがないのが、(舞台は1930年代)私にとってはかえって良かったような気がしました。

マシューズ家の毒 (創元推理文庫)

マシューズ家の毒 (創元推理文庫)

 

 あらすじ

嫌われ者のグレゴリー・マシューズが突然死を遂げた。すったもんだの末に検死を実施したところ、死因はニコチン中毒で、他殺だったことが判明。だが故人の部屋はすでに掃除されており、ろくに証拠は残っていなかった。おかげでハナサイド警視は、動機は山ほどあるのに、決め手がまったくない事件に挑むはめに…。

 

舞台となるマシューズ家に関連する人々全員の感じが悪いというか全員が怪しいまま、しかしどこか淡々と犯人捜しが進んでいきます。少々唐突にカップルが成立してしまう場面があり、「あれ?」と思ってついついページを戻って恋愛フラグがあったかどうかを確認してしまいました。まぁ「匂わせ」と言えなくもない行動が示されていましたが、そういったさりげなさも含めて全てがジョージェット・ヘイヤーらしいということに、面白味を感じましたね。

ミステリのトリックはいささか平凡ですが、何というか本全体によく統制のとれた弦楽4重奏でも聴いているようなムードを感じるのですよ。ホールで大勢が演奏するオーケストラではなく、どこかお洒落な家の一室で適度にリラックスしながら室内楽を聴いている気分とでも言えばいいのでしょうか。欲を言えば、もう少しロマンス要素を強めにして欲しかったかな。

 

*1:イギリスで第二次世界大戦時に発祥した小説形式で、当時アメリカで流行していたハードボイルド形式の小説の反義語として用いられた。 ハードボイルドのニヒルでクールなイメージに対し、「地域社会が親密である」「居心地が良い」といった意味を持つ「コージー(cozy)」を使用し、日常的な場面でのミステリーであることを示す。ウキペディアより