読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「夢見る赤毛の妖精」アマンダ・クイック

アマンダ・クイックは、以前に感想を書いたジェイン・アン・クレンツと同一人物です。ただしアマンダ・クイック名義で書かれた作品は基本的には時代モノですね。

「いかにもロマンス小説」なうっとりするパートとはうらはらに、ヒロインが投資、つまりオカネの稼ぎ方に長けているというビックリな設定で、 ロマンチックと現実主義のバランス具合にうならせられる話でもあります。しかし彼女の作品を何冊か読んでいると、これこそが非常にアマンダっぽい

他にはヒロインが職業を持っていたりするという、時代的には珍しいパターンも多いですね(職業夫人ということです)。またロマンス小説あるあるともいえる、ご都合主義的な展開(ヒロインとヒーローが一目で恋に落ちるなど)がないことも、アマンダの書く話の特徴とも言えるでしょう。

夢見る赤毛の妖精 (ヴィレッジブックス)

夢見る赤毛の妖精 (ヴィレッジブックス)

 

あらすじ

わたしがほしいのは、妻の座よりも本物の愛情 

伯爵であるサイモンは、かつて自分の一族のものだった屋敷と財産を奪ったファリンドン家への復讐を誓っていた。そのための手段となりうるのは、ファリンドン家の娘で、詩の創作を趣味とする知的な女性エミリー。彼女に接近したサイモンは、求婚の言葉を口にして彼女を驚かせる。 
だが、やがて父親からサイモンの魂胆を知らされたエミリーは、サイモンにあまりにも意外な申し出をした……。

 


ヒーローはヒロインの父親に対する復讐に燃えてという、ロマンス小説に割とありがちな動機でヒロインに近づきます。ただしこの二人はもともと文通で知り合い、実際に会う前から議論というかあーでもないこーでもないと、永遠に話し合いばっかりしているカップルでもあるのです(文学談議とか、読むのが面倒くさかった)。

物語の進みとして基本ヒロインの行動力ですべての話が展開する、といっても良いでしょう。そうしたヒロインの行動と口答えがあまりに多すぎて、ヒーローはずーっと機嫌が悪いですね。そんな彼がゴキゲンになるのは、夫婦で「愛を交わす」時くらいてしょうか。

ちなみにこの「愛を交わす」つまりセックスに関しても、ヒロインは「高度な次元でお互いに同調する」と表現しています。でも読んでいるコッチは、何が高度なのか?次元とは2次元なのか3次元なのかも最後までワケがわからず(2.5次元なら「テニスの王子さま」とか、今なら「ハイキュー」か「刀剣乱舞」?絶対違うよな)、実にヒーローの眉間に深いシワが刻まれる理由がわかる話でした(彼も当然、“高度な次元”に関して理解できていないフシがある)。

果たしてこのカップルはかみ合っているのかいないのか?と思いながら読み進めていたら、ヒーローがヒロインの愛の力で復讐に満ちた心を癒されるというありがちな結末(ただしヒロインの卓越した行動力によって)に落ち着きました(まぁロマンス小説なので、オチとしては順当なところでしょう)。

個人的には、本物の愛を得るには(うんざりするほどの)話し合いと(周囲を無視する大胆な)行動が大事だという教訓を得たということにしておきます。

しかしこれでは私がアマンダの小説の魅力を上手く伝えきれない気がします。でも実はロマンチックかどうかはさておいて、時々無性に彼女の小説に出てくる状況に全く流されないタイプの(話を聞かない)ヒロインが活躍する話を読みたくなるのも確かです。

加えてアマンダの本のヒロインは夫婦の営みにもけっこう積極的で、“したい”時は自分から誘う派なのもあるあるですね。その部分でも意思がはっきりしているので、中途半端にブレたりしません。なんか「an・an」のセックス特集に出てきそうなくらいで、現代人の私たちよりよっぽど潔ぎよいんじゃないかと思いました。