読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「もう一度あなたを」リサ・クレイパス

 私がリサの作品が好きな理由の一つに、時間軸がしっかりしていることがあります。この話は前回の「ひそやかな初夏の夜の」から数年遡った時期の話なんですが、「ひそやかな~」には出てこなかったウェストクリフ伯爵の妹アリーンと幼馴染のマッケナとの恋物語です。実は最初にこの話を読んだ数年前には、「親に引き裂かれた幼馴染との再会」というあまりに王道な展開に乗り切れなかったのですが、久しぶり読んでみたらはまるはまる!図書館から借りてきた「壁の花」シリーズを横に置いて、あっちを読みこっちを読みながらきゅんきゅんしてしまいました。

もう一度あなたを (ライムブックス)

もう一度あなたを (ライムブックス)

 

 あらすじ

19世紀半ばの英国。名門マースデン家の長女アリーンは、誰もが目を奪われるほどの美貌の令嬢だった。彼女は、馬丁として邸で働くひとつ年下のマッケナと、深く心を通じ合わせるようになっていた。ところがある日、2人の「不適切な関係」が、厳格な父親に知られ、マッケナは邸を追放された。もしもアリーンに会うため邸に戻ってきたら、大変なことになる…。彼女は愛するマッケナを守りたい一心で、「冷酷な令嬢」を演じる。しかし失意の日々を過ごすアリーンにさらなる「悲劇」が!

 

 

この本にはアリーンの恋愛と共に、妹オリヴィアの恋愛も描かれているのですが、アリーンとマッケナが通算12年(!)という長ーい時間揉めているのとは反対に、1年弱で綺麗にまとまってくれます。でもお手軽な印象を与えないのが、さすがのリサ・クレイパス・クオリティ!読み終わった後すぐに、最後のクライマックスを読み返しながら、「もうちょっと待つんだ、ウェストクリフ伯爵!(彼は妹のためにクライマックスをお膳立てしているので)」と呼びかけたくなるという一粒で何度も美味しい作品でした。

 

 

「ひそやかな初夏の夜の」リサ・クレイパス

リサ・クレイパスの「壁の花」シリーズ第一弾。もしかしたらこのシリーズの中では、この第一冊目が、時代背景を含めて一番良くかけているのかもしれないと思います。

「恋愛」という一種の虚構が結婚生活という現実に上手く着地するまでの話。結局アナベルが美人だったから上手くいったんでしょ、と安易に感じさせないリサの人物造形の複雑さには、読むたびにじんとしてしまいますね。アナベルが自分の世界(貴族階級)から愛する男性の属する平民階級へとたったひとりで移行することの真の意味が、現代人である私にはおそらく理解できないでしょう。だからこそこの本は私にとって正しく「恋愛小説」と言えるのもかもしれません。

 

ひそやかな初夏の夜の (ライムブックス)

ひそやかな初夏の夜の (ライムブックス)

 

 

あらすじ

19世紀半ばの英国。アナベルは22歳。貴族の娘とはいえ、家はひどく窮乏していた。社交界にデビューはしていたものの、誰からも求愛されない。アナベルは、上流社会で生きてゆくため、なんとかして貴族の青年と結婚したいと思っていた。愛のない結婚でもかまわない、と。2年後の初夏。アナベルは、社交パーティーの「壁の花」3人と知り合う。

 

 

 

お相手の実業家ハントは、貴族ではないけれど実力で成功してのし上がる魅力的な男性。こういう人物はリサの小説に非常に良く出てきます。彼女はこのタイプが好きなんだろうなぁとしみじみ。私個人の好みとしては、初期の作品である「同居生活」の実業家ザッカリーか、「黄昏にほほよよせて」のホテルオーナー、ハリー・ラトレッジの方が好みかな。

それから途中ちょいちょいシリーズ第2弾のヒロイン・リリアンとそのお相手ウェストクリフ伯爵(「恋の香りは秋風にのって」)との恋愛フラグがたちまくっているのが笑えます。

 

「ときめきは永遠の謎」ジェイン・アン・クレンツ

2018年を迎えるにあたって、今年の目標に「自己開示」をしてみようと思い、読書の備忘録を公開してみたくなりました。どんな本を読むのか読まないのかはその人のかなり個人的な部分なので、これまでわが子にすら読んだ本をあまり知られたくなかったというのが本当のところです。なぜかふと思い立ったので、かなり偏った読書備忘録を書けるだけ書いてみようと決めました。第一弾は安定のジェイン・アン・クレンツです。

 

ときめきは永遠の謎 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

ときめきは永遠の謎 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

 

 

あらすじ

5人の女性によって作られた投資クラブ。そのうちの1人が殺害され、他のメンバーも姿を消す。 
このクラブにはもう一つの顔があり、答えを探す男と女に「過去」が立ちはだかる── 

 

 

 

「ハーレクイン」と呼ばれるロマンス小説が大好きなのだけれど、ジェイン・アン・クレンツの描く主人公の女性がハーレクイン的なヒロインかと言うと、ちょっと違う気がします。彼女の書く主人公の特徴は、落ち着いていてむやみに騒ぎ立てないからです。ハーレクイン的な見地から見れば、主人公のシャーロットがものすごーく魅力的とはいい難いかもしれません。シャーロットは殺人事件に巻き込まれてもパニックにならず冷静な判断を下し、精神的に少々問題を抱えた私立探偵マックスとの恋愛に対しても、相手を急かさず関係を少しずつ進めていく精神的に大人の女性です。個人的には「普通の」女性が内に秘めている魅力を書かせたら、ジェイン・アン・クレンツに右に出る人はいないんじゃないかと思っていますね。

 

官能シーンは、他のジェイン・アン・クレンツの作品と比べると普通かな。基本的には登場人物達が(犯人も含めて)無意味にごねたりしないので、いい意味で本当に安心して読めます。