読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「幻の花嫁」クレスリー・コール

 この本はクレスリー・コールのローア・シリーズ第2弾なのですが、最初にはっきりと明記しておきましょう。ローア・シリーズはどれも激しい官能シーンが書かれていますが、その中でもこの「幻の花嫁」はどエロいです。「時の扉を開いて」、「鏡のなかの魔女」に出てくるカップルたちも、非常に積極的な姿勢で恋人同士の営みに取り組んでいますが、この本のヒロイン・ネオミはそれをはるかに凌駕する女の中の女なのです。あらすじではバレリーナと書いてありますが、実は百戦錬磨の元ストリッパー!前世では裸一環でのし上がった、お色気ムンムンの女性!しかもそのネオミに対してのお相手である吸血鬼コンラッドは、まさかの童貞設定!この設定からして、クレスリーの官能シーンへのやる気に満ちた取り組み姿勢が伝わってきますね。でもエロじゃない部分も、面白いですよ(念のため)。

幻の花嫁 (ソフトバンク文庫)

幻の花嫁 (ソフトバンク文庫)

 

 あらすじ

バレリーナとして成功を収めたネオミは、屋敷のお披露目パーティで、元婚約者に殺害される。以来八十年、彼女は幽霊として同じ屋敷に暮らしていた。ネオミの声は誰にも届かず、その姿は誰からも見えない。長年、ひたすらに無視され続けて、自分が本当に存在しているのかどうか頭を悩ませ始めていたところへひとり男が現れる。「美しい女性」男はそう言った。赤い目をしたこの男には、わたしが見えるの?…肉体のない幽霊と堕ちたヴァンパイアの狂おしくも切ない恋を描いた“ローア”シリーズ待望の第4弾。

 

 

時の扉を開いて」と「鏡のなかの魔女」が世界をまたに架けての空間移動がやたらに多い「タリマンズハイ」と呼ばれるゲームの話であるのとは対照的に、この話では幽霊であるネオミが移動できる範囲の「エランクール」という邸宅内で起こる出来事がほとんどを占めています。

しかも中盤までネオミは実体のない幽霊なので(でもガンガン脱いで誘惑してくる)、コンラッドと実際に触れ合うこともできずにふわふわと漂っているだけなのです。(でもできる範囲でイロイロしている)ちなみにあらすじには「狂おしくも切ない恋を描いた」とありますが、実際は「(エッチなことを)いたしたくてもなかなかできなくて悶々する日々を描いた(ネオミが幽霊で実体ではないため)」のではないかと思いました(まぁこれではちょっと身も蓋もないかな)。

そんなもどかしい2人の愛の成就(セッ○スしまくりの日々)に大きな役割を果たして、ネオミを実体化してくれるのが、「鏡のなかの魔女」のカップル魔女マリキータと人狼ボウエンです。ほんと、ネオミもコンラッドもマリキータの魔力に無茶ブリしすぎですよ、ボウエンがマリキータの身体を心配して怒るのも無理ないと思いましたね。

最終的な収まり方がちょっとご都合主義かな?とは感じましたが、そもそもローア・シリーズ自体があり得ないファンタジーなので、ケチなどつけずに楽しんだ方が得でしょうね。

蛇足ですが文中で、幽霊である自分が実体化した理由をごまかすためにエロいテクニックを繰り出しまくるネオミも凄いけれど、コンラッドも「セッ○スでおれをごまかそうとしている。それでおれを操ろうと思っているな」と言った数行あとで、「まさか...?おれにこんなことが...?」とあっさり翻弄されているので、いくらなんでも早くごまかされすぎでは?と思いました。

そしてその後2ページしか進んでいないのに、コンラッドは「ふたりが一緒にいること。いま大事なのはそれだけだ。ほかの一切は些末事でしかなかった」とすっかりご満悦となってしまい、完全にネオミのエロテクの手玉に取られていました。それを読んで、「えーっ!!さっきと全然言うことが違うじゃん?コンラッド!」と思った読者は、絶対に私だけではないはずと信じています。でもエロじゃない部分も、ちゃんと面白いですよ(2回目の念のため)。