読書備忘録ーロマンチックな回覧板をまわす

これまでに読んだ本の感想をこっそりと書いていく予定 ロマンス小説多めでかなり偏りと多少のネタバレがあります

「めくるめくキスに溺れて」リンゼイ・サンズ

 この本から学べる貴重な教訓は、「愛はすべて(におい)を越えない」でしょう。リンゼイの書く話には、時々ハイランダー(勇猛な傭兵として広く知られているヨーロッパの戦士の名称)が出てきます。他の作家さんなら戦士と乙女のロマンチックな恋が展開するはず。でもリンゼイなので、恋のスタート地点にすらなかなかたどりつきません。

そう、ダンカンは臭いのです!実は彼は年に2回しかお風呂に入る習慣がないため、全身が汗とあかで汚い・そして臭い。イリアナは政略結婚のお相手のダンカンとの床入りを断固拒否します。エッチはお風呂に入ってからということですね。

 

 

めくるめくキスに溺れて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

めくるめくキスに溺れて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

 

 あらすじ

愛する夫は屈強なハイランダー。でも彼、ちょっとだけ問題が…!? 
中世スコットランドを舞台に繰り広げられるホットでキュートな傑作登場! 
〈約束の花嫁シリーズ〉第二弾 

 

 

これはイングランドから嫁いできたイリアナとスコットランドハイランダー・ダンカンとの恋物語、というかお風呂をかけての攻防戦です。あらすじの「ちょっとだけ問題が(要はダンカンが臭い)」に関連して、ダンカンが清潔にしてくれるまで床入り拒否するためにイリアナがとった手段が、けっこうエロい!なんと彼女は自分で自分に「貞操帯」をつけてしまいます。エッチがしたいダンカンが貞操帯のカギ欲しさにイリアナを誘惑する場面は手に汗握る、というのはウソで、ダンカンがただのアホにしか見えません。本を読めば分かりますが、どう考えても「早く風呂に入ればいいのに」としか思いませんでした。

しかし安心してください!ダンカンは臭いだけの男ではなく、城主としても優秀です。そしてリンゼイの本に出てくるヒロインに、ただ待っているだけのタイプはいません(そこが好き)。後半の戦闘では、イリアナも知恵を絞って敵を撃退します。イリアナは性格的に「いたずらなキスのあとで」のヒロイン・シュゼットに近いかな。

リンゼイが好んで書く、言いたいことをはっきり言うヒロイン(この場合は臭い・風呂に入れ)とそれに振り回されながらもしぶしぶ言うことを聞くヒーローという組み合わせは、ロマンチック・コメデイとして必見です。

「いたずらなキスのあとで」リンゼイ・サンズ

 「微笑みはいつもそばに」に続く第2弾、妹のシュゼットの恋愛編。タイトルこそ可愛らしいのですが、いくぶんタイトル詐欺な内容とも言えるでしょう。とにかくシュゼットが強烈でアクティブ感に溢れたレディ(!)なのが、読んでいるこっちとしては面白くてしょうがありません。そんなシュゼットが初対面の男性に結婚を申し込むことから物語が回りだします。申し込まれたダニエルはシュゼットに惹かれつつも、あまりのスピード展開におたおたしています(でもキスはするし、その先もする)。

この話から得る学びは「考えるな!感じろ!(byブルース・リー)」といったところでしょうか。

いたずらなキスのあとで (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

いたずらなキスのあとで (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 

 あらすじ

クールな独身貴族……のはずが、
型破りで初心なおてんば令嬢と出会ったその日に婚約――! ?

あふれるユーモア! とびきりキュートなヒストリカル・ラブ
『微笑みはいつもそばに』に続くマディソン姉妹シリーズ第二弾! 

 

 

この話は一作目の「微笑みはいつもそばに」のいわば裏バージョンで、一作目がクリスティアナ・ラドノー伯爵カップル視点、二作目はシュゼット・ダニエルのカップル視点で、起こったできごとが描かれています。登場人物が入り混じる中、この人はこの時どう動いていたのかがわかるという面白さがありました。

そしてあふれるユーモアは間違っていませんが、この作品に関しては、あふれるラッキースケベと付け加えたくなること請け合いです。個人的にはシュゼットが男性のイチモツを、「春の柱(メイポール)」と呼んでいるのがツボでした。(官能小説でみつけた言い方らしいです)

クリスティアナは長女らしく慎重な面を持っていますが、次女のシュゼットははきはきとモノを言う、情熱的で行動派の女性です。何とか冷静に行動しようとするダニエルと、結果として無邪気かつ熱心に誘ってしまうシュゼットの組み合わせ、これを笑いながら楽しんでいるうちに最後までするりと読めてしまいますね。

「微笑みはいつもそばに」リンゼイ・サンズ

この作品から学んだことは、「死体はもっと計画的に移動させよう」と「いくら燃え上がっても窓際でいわゆる男女の“ことをいたす”のは、紳士淑女としてはいかがなものか?(外から丸見えだから)」の2つです。でも多分どっちも一生役に立たない学びだと思います。

微笑みはいつもそばに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

微笑みはいつもそばに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 

 あらすじ

死んだはずのイジワル夫が、とびきり優しくなって生き返った! ?

謎めく伯爵との熱い恋のゆくえは……
華やかなロンドン社交界で繰り広げられる抱腹絶倒のヒストリカル・ラブ! 
注目の新シリーズ開幕! 

 

 

 リンゼイ・サンズは私の中で「ロマンス小説家」ではなく「艶笑コメディ作家」として君臨しています。ロマンスというよりか、エッチとかセクシーな色っぽさのあるコント的な展開の話が多いので、 リンゼイ・サンズ自身がかなりお笑いの才能に恵まれた女性だろうなと感じさせられますね。特にヒロイン・クリスティアナとお相手のラドノー伯爵の死体に関する掛け合いはネタ番組で見るアンジャッシュのすれ違いコントを思わせるため、何回読んでも面白くて仕方ないです。

そういったコメデイ・パートとは別に、クリスティアナが不幸せな結婚生活から受けた精神的な呪縛から段々と解き放たれる様子には、ついほろりとさせられます。ちょっと落ち込んでいる時なんかにはリンゼイ・サンズを読むのがお勧めなんですが、この文章から想像してもらうよりも結構エッチなシーンが多いので(しかもベッド以外での)、他人には少々薦めにくい本なのです。

「ガラスの家」ミシェル・リード

 ハーレクインによくある「偽装結婚」ものです。それにしてもこの本のヒーローであるデインは、これまで読んだハーレクインの中でもぶっちぎりにワガママでした。出てくると怒鳴っているか機嫌が悪いかヒロインを誘惑しているかという、リアルでは絶対知り合いたくない人物ですね。リリーはこの男のどこがいいんでしょうか?私にはさっぱり理解できませんでした。

ガラスの家 (ハーレクイン文庫)

ガラスの家 (ハーレクイン文庫)

 

 あらすじ

金目当てに結婚し、浮気を楽しむ悪女!いわれなき汚名に彼女は耐えるしかなかった。リリーの夫は酔っ払い運転の車に轢かれて非業の最期を遂げた。すぐさま夫の兄デインに連絡が取られ、病院の殺風景な部屋でリリーは彼の到着を茫然と待つことになった。もうすぐデインがここに来る。私を軽蔑している彼が…。金目当てに僕の弟と結婚し、浮気を楽しもうとする悪女!名門ノーフォーク家の名を汚す女!二年前、結婚を間近に控えていた時、デインから浴びせかけられた言葉はいまでも忘れられない。

 

 

最終的に2人はくっついたけれども、またデインが癇癪を起こしてモメそうな気配がぷんぷんしています。ハッピーエンドがお約束のハーレクインだけれど、この2人はリリーの忍耐力が切れたら突然別れるんじゃないかと思ってしまいました(ていうかリリーの男の趣味は、正直どうかしてると思う)。

それにしても最後まで男性が自分でほとんど動かずに終わるという、ハーレクインのヒーローとしてあるまじきデインの行動力のなさには驚きました。どうにもそこが引っかかるので、私自身この話の再読はないと思います。

 

「春の雨にぬれても」リサ・クレイパス

 「壁の花」シリーズの第4弾、最終巻です。デイジーは「恋の香りは秋風にのって」の主役だったリリアンの妹ですが、リリアンほどインパクトがあるタイプではないので最初に読んだ時にはこの話にあまり強い印象をうけませんでした。しかし時間を置いて再読すると、実に可愛らしい恋人たちの話というイメージですね。

春の雨にぬれても (ライムブックス)

春の雨にぬれても (ライムブックス)

 

 あらすじ

壁の花」の3人までが幸せに結婚し、残るはデイジーだけ。
花婿を見つけられずにいる末娘に業を煮やしたアメリカ人実業家の父は、2カ月以内に花婿が決まらなければ、父の決めた男性と結婚せよと、最後通牒をつきつけた。
不本意な結婚は阻止できないものか。
ウェストクリフ伯爵はハウスパーティーに花婿候補の紳士を招待してチャンスをつくってくれた。
デイジーは思いをこめて「願いの泉」にピンを投げ入れる。
すると背後に見知らぬ男性が。

 

 

 

デイジーは夢見がちでたくましいタイプではありませんが必要に応じては結構大胆に行動できる子なので、このカップルはこじれそうで案外あっさりまとまり読んでる方にもストレスがありません。恋心を演出する小道具の使い方も上手いし、一見ビジネスライクでも内面は情熱的なマシューのキャラも分かりやすかったです。

それからリリアンの夫であるウェストクリフ伯爵が、なんかしらない間に物分りの良いできる男性にクラスチェンジしていたのでけっこうびっくりしました。「ひそやかな初夏の夜の」の時と比べると、だいぶ性格が丸くなってたのが地味に面白かったです。

「冬空に舞う堕天使と」リサ・クレイパス

 この話に関しては「満を持して」という言葉がぴったりで、前回からの布石がバッチリ回収されています。女性にとってセバスチャンという男性は死ぬほど魅力的らしいのですが、実は私自身が全くメンクイではないので、(結構最近まで、メンヘラホイホイのハンサムな実弟への愚痴を母に聞かされていた)単純に話の展開を楽しんで読みました。

冬空に舞う堕天使と (ライムブックス)

冬空に舞う堕天使と (ライムブックス)

 

 あらすじ

19世紀の英国。
壁の花」の一人、エヴィーは、とても内気で口数の少ない娘だった。そんなエヴィーが、放蕩者で知られる美貌の青年貴族、セバスチャンの邸をひそかに訪れ、意外な提案をした。
「いますぐスコットランドへ発って、わたしと駆け落ち結婚をしてください」
エヴィーは、親友たちにもすべてを打ち明けられないほどの危機に直面していた。

 

 

 

日本人のイケメンとは違う性格の悪さを持つセバスチャンですが、エヴィーとの幻想的な初夜にはうっとりさせられましたね。リサはこういう官能シーンが本当に上手いなあと思います。それに一作目からすると、エヴィーの成長ぶりがなかなか素敵です。

個人的にはエヴィーは父親が経営している賭博場の従業員キャム(ジプシーの血が混じった神秘的な黒髪男子)とくっついてもいいんじゃないかなぁと思ったりしました。でもそこはさすがリサ!別のシリーズで、キャムにもちゃんとお相手がいるのです。これがリサ・クレイパスを読む、密かな楽しみかもしれません。

「恋の香りは秋風にのって」リサ・クレイパス

 「壁の花」シリーズ第2弾。もうこれは、超ロマンチックとしか言いようがない話です。あらすじだけ読むと、戸惑うふたりってなんだよ!魔法の香水ってなんだよ!という突っ込みが頭をよぎりますが、本編はロマンス小説としてはパーフェクトかもしれません。イギリス貴族のウェストクリフ伯爵にとって、自由奔放なアメリカ令嬢のリリアンは腹がたって腹がたって仕方のない存在のはずとか、読んでるこっちが恥ずかしくなるくらいにどこもかしこも恋愛フラグしかたってないです。

恋の香りは秋風にのって (ライムブックス)

恋の香りは秋風にのって (ライムブックス)

 

 あらすじ

19世紀の英国。アメリカ人新興実業家ボウマン家の長女、リリアンは、家族と一緒に、数週間におよぶウェストクリフ伯爵のハウスパーティに招待されていた。香りに強い感受性を持つリリアンは、出発前に、香水商で、理想の恋人と出会えるという「秘密の香水」を手渡される。パーティの主催者は広大な地所、舘の主、ウェストクリフ伯爵。美貌の青年貴族だが、高慢で堅苦しく、どうにもリリアンの気に障る。それはウェストクリフ伯爵も同様で、無作法なリリアンが不快だった。ところがある日、ウェストクリフは、ものかげでリリアンと2人きりになったとき、リリアンを抱きしめキスしてしまう。戸惑うふたり。これは、「魔法の香水」のせい?それとも・・・?

 

 

この話は、尊大なウェストクリフと気持ちがよいくらい自分に正直なリリアンがどうしようもなく惹かれあうのを、文字通り作中人物と読者の全員でニラオチする話です。リリアンの親友である前回の主人公アナベル(「ひそやかな初夏の夜の」)も、途中からニヤニヤしてますね。つい「私も同じ気持ちだよ、アナベル」とか言いたくなってくる。

それから最後の数ページにリサが仕掛けた第3弾へのしかけも、手練れとしか言いようがありません。